表現アートセラピーとは


表現アートセラピーは、1970年代に欧米で発展した芸術療法です。
一つの媒体に限らず、いろいろなジャンルや表現をすべて使い、心、からだ、感情、
スピリチュアリティすべてにアプローチするホリスティック(包括的)な療法です。
もともと芸術表現は人間にとって根源的なものであり、すべての人が芸術家であると考えます。
ですから作品の上手下手を問わず、分析解釈せず、お互いを尊重しケアする姿勢をとります。
 
芸術療法一般に、心身の解放、創造性の高揚、自己発見の促進、問題解決能力、
コミュニケーション能力促進の効果があると言われています。
無意識の潜在力や資源にアクセスすることが可能なので、
心の問題のみにフォーカスせず、心身の癒しが促進されます。
表現アートは、いろいろなアート表現を組み合わせて用いるために、より深い心の層にアクセスすることができます。
そして心のいろいろな部分を違う表現により適切に表現し発見できるプリズムとなります。
 
欧米では、現在表現アートセラピーは、医療、心理臨床、カウンセリング、ソーシャルワーク、
看護教育、宗教(教会活動)などの分野で幅広く用いられています。
精神科や病院をはじめ、学校、ホスピス、刑務所、災害センター、地域センター、
老人施設、仕事場などで用いられ、対象も子どもから成人、高齢者とすべての年齢層に対応することができます。

表現アートセラピーで用いる各種芸術療法

 

絵画造形・コラージュ(アートセラピー)

一般にアートセラピーと呼ばれている表現。絵やコラージュ、粘土や立体などビジュアル・アート(美術)と呼ばれるもので表現する。
自分の内界に深く没入できる。自分の世界を発見し個性を確立する効果が高い。
素材や色からの刺激により、感覚も高められる。作品を元に人に語ることで、
今までもやもやして言葉になりにくいものが言葉にされ、自分の言葉を獲得できる。
 

ダンスやムーブメント(ダンス・ムーブメントセラピー)

からだを用い、からだの動きやダンスなどで表現する。からだに注意を向けるため、
今の自分のからだの感覚が覚醒され、豊かになる。そのため頭で考えるだけでない、実感や直感が育つ。
心身や感情の解放、爽快感が促進される。またビジュアル表現のまえにからだをウオームアップすることで,
より心の深い層からの表現や素直な表現が生まれる。
 
声・サウンド・ミュージック(ミュージックセラピー)

声やサウンド、音楽による表現。自分の声を通してからだと心のつながりが実感できる。
また楽器や声などを使い、一緒に音楽を作ることで、グループの一体感やコミュニケーション感覚がたかまる。

 

ライティング(詩歌・文芸療法)

理論的に書く、考えながら書くというよりも、出てくるままに書きつづることで
自分の感じていること、考えていることを発見できる。絵を見ながら言葉を書いたり、
絵や作品から物語や詩を書くことで、自分の心を整理し統合することができる。
また言葉にすることで新しい現実の切り取り方や視点が生まれる。

 

ドラマ(ドラマセラピー)

自分以外の人や物語の登場人物、動物などになってみることで、新しい自分を発見したり、開拓することができる。
またいろいろな感情や物語を演じることで共感力が深まる。一緒に演じることでグループの一体感が実感できる。
演じている中で自分の感情や葛藤が発散でき、それが昇華される。人とのかかわりの楽しさが味わえる。

 

表現アートセラピーの歴史

表現アートセラピーとは、Expressive Arts Therapy や Intermodal Expressive  Therapyと呼ばれているもので、
アートセラピー(絵画や造形、粘土、コラージュ など視覚アートを用いるもの)のみでなく、
ダンス・ムーブメントセラピー(体の 動きによる表現)、ミュージック・セラピー(音楽やサウンド、声による表現)、
ラィティング(詩や散文など文章による表現)、ドラマセラピー(演技やパフォーマ ンスによる表現)など、
さまざまな芸術媒体での表現を用いる統合的な芸術療法である。
そして作品の上手下手を問わず、一切分析や解釈を行なわず、
表現者の主体的な体験を尊重する方法である。

表現アートセラピーは、多様な芸術表現が相互に結びつき、
互いに刺激し合うという性質を大切にしているため、一つの表現媒体に限定しない。
この療法は、1970年代のアメリカで同時発生的に生まれた。ボストンのレスリー大学で、
1974年に初めて表現アートセラピーの修士課程がスタートしている。
ショーン・マクニフ、パオロ・クニル、ナタリー・ロジャーズなどが、この分野のパイオニアである。

カール・ロジャーズの娘であるナタリー・ロジャーズは、この表現アートセラピーを
パーソン・センタード・アプローチの環境で行なうことの重要性を強調し 、
「パーソン・センタード表現アートセラピー」と呼ぶことで自らのアプローチ、立場を明確にしている。

国際表現アートセラピー学会(International Association of Expressive Arts  Therapy)が、
1994年に設立され、表現アートセラピストの認定を行っている。
現在表現アートセラピーを学べる大学機関は、ボストンのレスリー大学(Lesley)、
サンフランシスコのCIIS(Calfornia Institute of Integral Studies)、
ノースキャロライナ州の州立アパラチアン大学(Appalachian) 、
ヨーロッパ・グラデュエート・スクールEurope Graduate Schoolである。